すきなことすきなだけ

ゲーム大好き。絵を描くのも好き。

【OMORI】クリア感想

祝・Steamウィンターセール!ということでOMORIをクリアしました。

 

ネタばれ感想。

大まかな内容は人から聞いて知っていたのですが、あまり人の話をまじめに聞いてないので大切な部分を思い出せずに、真実を知ったときはドキッとしました。
もともとサスペンスが大好きなので、真実が自殺から殺人(事故)に転じたのはぞくぞくきましたね。とっても上質な答え合わせを楽しめました。。

 

ドラマでも階段からの転落はかなりの死因率を誇ってます。人結構すぐ死んでしまう。
私は、主人公君は最初に何かの傷を抱えているから、こういうおとなしい子なんだと思っていたのだけれど、初めに認知したのが「幻の中の」主人公だったから、やはりすでに傷を抱えてはいたんだね。
実際のところは、もともと引っ込み思案で姉に頼り隠れるような性格だったのかもしれないと考えている。
階段のシーンで何があったのかはわからないのだが、鬼気迫るように練習にいそしんでいた姉と、恐らく…失敗を恐れだんだんとやりたくなくなってきていた主人公君との間でのもめごとが、下に落ちてるバイオリンということなんだろうと思う。
完璧にしたい姉は、恐らくケルがバイトまでして買ってくれたバイオリンを…多分投げつけるとかした主人公君に激しく叱責したのだろうと思う。その厳しさに真っ向から戦うことが出来ない心の弱い主人公は、逃避するかのように体を押しのけてしまった、というところかなあ。

しかしその後、主人公が姉をベッドに運んで途方に暮れる写真があり、私はあれがすごくリアルで怖かった。何かとんでもないことが目の前で起きているはずだが、なにもかもが理解できず、ただただ傍らで膝を抱える主人公。。それがどれくらいの時間なのかはわからないが、すんごいリアルだと思った。

 

それを現実に引き戻したのが、バジル。

彼がなぜあんなにおどおどしているのかが謎だった。はじめは、共犯者として罪の発覚を恐れているからなのかとも考えたが、どうやらもともと気が弱く、目をまっすぐに合わせることが不得意な人物だったようだった。

そんな彼(目と髪の色も違うから外人的に馴染めないものというハンデの象徴かもしれない)が、なぜ「そこまでして」主人公を守ろうとしたのか、というのが私の中でものすごく難題で、興味を惹かれる部分だった。

 

しかしながら、何かこれぞという理由があったわけではなく。そんな素質をもったバジルだからこそそうしてしまったのか、、とだんだんと解ってくる。

私の好きな「相棒」というドラマでもたまにある描写だが、こういう年端もいかない少年たちの考える最良の方法というのは、得てして刹那的で破壊的で、無知であるがゆえの愚かさがどうしようもなく現実を悪化させてしまう。そういったものが、このゲームにはあった。これは単なるサスペンスや、衝撃的な自殺や殺害をテーマにしたトラウマが売りのゲーム、というものを超えてくれたと感じたし、素直に感動した。

 

さらに良い所は、「罪を共謀しても救いにはならない」というどうしようもなさがあったことだ。

かといって罪を明らかにし受け入れるような強さや見通しは、当時の彼らには絶望的に無理難題であった。
他人とのコミュニケーションに自信が欠如しているバジルにとってできる、最大限の「友達を想う」行為であった、というのがとてつもなく痛々しい。痛々しいし歪んでいる。歪んでいるけれども、彼の中ではそれしか見つけられなくて、本当に守りたい一心の一途さであったろうと思う。

それでも共謀したことにより、バジルは負う必要のない重荷を背負うことになった。その時は、友達のピンチなのだから乗り越えられるはずだ(ふたりならば)と、あるいは乗り越えられる自分を信じたくてそう願っただろう。

けれども主人公は引きこもり逃避し、ひとり現実に残されたバジルはついに誰とも目を合わせることが出来なくなってしまった、それでも現実を生きなければならなかった、それしかやり方がみつけられなかったバジルくんは、一人でどんどん追い詰められていくわけだ、そして、さらに何もなかったことにしようとするかのように引っ越し??????よくそんなことができるよねと、叫ぶ気持ちはまったくもって正しい。

当時救いたい一心だったバジルの心は次第に、感謝(あるいは自分への特別な依存)をくれなかった主人公への裏切りのように変化し、よりおかしくなってしまったのは大いに納得できた。

そこのあたりのバジルの、心の汚くなっていきかたや主人公への、自分の欠落からくる欠乏を埋める一筋の光かのような縋りっぷりは、もうちょいガッツリ見たかったところ。

 

エンディング分岐では、バジルくんは自殺してしまうようなのだが、、
主人公は、いくら自ら罪を犯してしまったからとはいえ、自分ひとりで心の中に引きこもり、助けようとしてくれた自分を「なかったことに」しようとするのはなかなかにひどい。バジルくん報われない。
だけれども悲しいことに、きっとバジルは「そういう存在」でもあったのだろうと思う。その自分の無価値さを彼自身痛いほど自覚しながら生きていて…だからこそ、共謀者になるなんていう強烈な餌にとびついてしまったのだろうとも思う。バジルくん最初から報われない。

 

なぜそんなことをした?
という外から見える図と、中にいてその場にいてその知識と知能と年齢でできる行動とは、おおいなる差がある。
どうしようもなかった、未熟な最大限の行動がとびきり鮮烈にかかれていてとても心に残る作品だった。さらに、そのことの是非について語るものが誰もいなかったというのがまた良かった。
この重荷を抱えてどう生きていくのだろう、覆らない過去とどうして生きていくのだろう、そういった人生の余韻を感じられるのはとても良い作品だと私は感じるので、これはプレイしてよかった。ありがとうございます。バジルくん可愛いよバジルくん。